第32話

「佐藤さん、もしかして、そろそろ帰らないといけない感じだった?」


柊木は気を使って真緒に言う。


「いえいえー…二次会もあるんですよねー?」


「その調子だと、もう、帰ったほうが良さそうだけど…?」


「先輩と一緒に飲むのが楽しいので平気です!」


真緒はいきなり椅子から立ち上がる。

完全に酔っ払いだ。


「ちょっと、真緒!?」


カレンはびっくりして真緒を見る。


「完全に酔っ払いだね。」


黒羽根が愉快そうに真緒を見ている。


「ー…うっ…。」


突然、ふらりと真緒の体が揺れる。

そして、真緒の体はバランスを崩し、後ろに倒れようとする。


「佐藤さん、危ない!」


咄嗟に柊木が真緒の体を支える。


「え…。」


目の前に柊木の顔がある。

真緒はそれをぼーっと見つめていた。


「柊木さん、きれいな顔ー。」


「え!!?佐藤さん??」


「柊木さん、真緒、完全に逝ってますね。」


カレンは苦笑しながら言う。


柊木は少し顔を赤くする。


「柊木が佐藤さんのこと、送ってやれば良いんじゃないか?」


黒羽根がからかいながら言う。


「でも、佐藤さん、誰かと喋っていて、迎えがどうの言っていたんだ。」


「え、佐藤さん、彼氏でもいるの?」


「真緒は彼氏はいないはずだけど…?」


「じゃあ、柊木が送っても問題ないだろ?」


「まあ、一人で帰らすのは心配だもんな。」


「そうだぞ。

女の人がこんな遅い時間に帰るのは危険だからな。

柊木、しっかり佐藤さんのこと、守ってやれよ。

俺は、飯田さんと別のところで飲み直すからさ。」


「黒羽根さんともう少し、趣味の話で盛り上がりたいし。

柊木さん、真緒のこと、よろしくお願いします♪」


「本当に迎えが来ないなら、俺が連れて帰るけど…。」


「そうだな…じゃあ、そろそろ出るか!」


「出ましょう。

あ、お会計はどうしましょう?」


「今日は俺が誘ったし、俺が出すよ。」


「ありがとうございます~♪」


柊木は真緒をゆっくりと椅子に座らせると、店員を呼んで、会計を済ませた。

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