第31話

お酒はどんどん進み…



「柊木さん、いけますねー…!」


真緒の目の前には、ビールのグラスがテーブルの上に何個も乗っていた。

柊木もまあまあ飲んでいたが、真緒の方が、早く酔いが回った様子だ。


「佐藤さんは飲み過ぎかな…。」


柊木は苦笑する。


その時、真緒のスマホが鳴りだした。


「はぃ?誰ですか?」


プルプル震える手で、スマホを取り、呂律が回っていない状態で喋る。


「真緒?ルキだけど…。」


スマホから、ルキの声がする。


「あら!ルキ?

どうしたの?」


「真緒こそ、今、何処にいるの?」


「今?いざかやでー飲んでますぅー……。」


「誰かと一緒?」


「カレンとー、柊木さんとー、黒羽根さんとー、それがどうしたの?」



ルキはスマホの向こうで真緒の様子がおかしい事に気づく。


「真緒、大丈夫?

今から、迎えに行くから。」


「ハッ!?

ダメダメ!タクシーでかえるからー…。」


ルキが来たら、ルキの存在がバレてしまう。

それだけは阻止したい。


「呂律が回っていないみたいだけど?」


スマホ越しから、ルキの怒気を帯びた様子が、声になって聞こえてくる。


「ははッ、そんにゃ、まさかー!」


ハッハッハっと誤魔化したような調子で言う。


「いつから、そんな口調をするようになったの?

とりあえず、行くから。」


「だいだい、場所がわからないでしょ!」


「俺を誰だと思ってるの?」


スマホ越しに殺気を感じる。


あれ、可笑しいな…殺気?

私、吸血鬼を怒らせている!!??


「ヒイッ!!」


ピーーーー………。


手を滑べらせて、間違えて通話を切ってしまった。

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