第28話
「はあはあッ!!」
松田芳子の呼吸が荒くなる。
過呼吸気味の様子だ。
「松田さん、大丈夫ですか!?」
ルキは松田芳子に近づこうとする。
「イヤアアア!駄目ッ!!これ以上近づかないで!!!」
「松田さん!?」
松田芳子は苦しそうに胸を抑える。
ルキはやっぱり駄目だったかと悟り、鋭利な爪を光らせる。
「松田さん、あなたに罪はないし、むしろ、好きだった方かもしれないが…。」
ルキは諦めたように嘆く。
「はあ…ルキくん…。」
「松田さん…。」
一瞬の沈黙が流れる。
そしてー
「ルキくん…いいいい…イッケメンすぎるわ!!!!!」
鼻息荒く、松田芳子がキラキラした瞳で叫んだ。
「ん…????」
ルキの動きが停止する。
「ちょっと!!ルキくん、芸能人なんかと比べ物にならないくらい、イケメンね!
本当にこの世界の人!!!???現実の人なの!!??
そんなにおしゃれしてどこに行くのよ!!??」
グイグイと松田芳子は詰め寄る。
「あ…へ…?」
ルキは吸血鬼らしかなぬ間抜けな返事をする。
すっかり毒気を抜かれてしまった。
「まさか、デート?」
状況をすぐに察知して、ルキは…
「真緒の帰りが遅いので、迎えに行こうかと思いまして。」
すぐに冷静な表情に変わる。
「まあー!!!なんて優しいの!
こんなイケメンに迎えに来させるなんて、真緒ちゃんも罪な女ね。
あ、褒めてるのよ。」
「ははっ…。」
「でもー、こんな時間だし、心配よね。
この時間だと、残業か上司との飲み会かもね。」
「残業か飲み会…。」
「残業だったら、ルキくんに連絡するはずよねー。
ってことは、飲み会かもね!」
「飲み会とはなんですか?」
「みんなで集まってお酒を飲んだり食べ物を食べたりするの。
そして、上司の武勇伝を延々と聞かされて、上司をヨイショするのよ!
まあ、大変な仕事よね。真緒ちゃんも大変ね。」
「とにかく、みんなで集まって飲み食いするんですね。」
「そうねー。
まあ、悪い虫がついてないといいけどね。
真緒ちゃんも女性だからねー…。」
「悪い虫とは?」
「いやぁねー!!男に決まってるじゃない!!
ルキくん、純粋ねー♪」
「!!!」
ルキの雰囲気が変わる。
ヒヤッと冷酷な空気が流れ込んでくる。
「あら?なんか寒いような…。」
松田芳子は身震いする。
「松田さん、ありがとうございます。
やっぱり、松田さんは頼りになりますね。
では、そろそろ、真緒を迎えに行かなといけないので…。」
「気をつけてね!」
ルキの背中を見送りながら、松田芳子はポツリと嘆く。
「あれは、気付いていないなー…若いって良いわあ!」
うふふと笑いながら掃き掃除の続きをする。
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