第8話

「ルキさんは何がお好きですか?コーヒー、紅茶、お茶しかありませんが。」


キッチンから声をかける。


「紅茶かな。」

「分かりました。」


レトルトの紅茶を入れる。

とても簡単だ。

時間短縮。


二人分の飲み物を入れたカップをソファへと運ぶ。


カチャッと音を立て、カップがテーブルに置かれる。


ルキは優雅にカップを手に取り上品に紅茶を飲む。

滑らかな動作に目を奪われる。



紅茶を飲んで一息ついたルキはソファにもたれ掛かる。



真緒も紅茶を飲んだ。


紅茶を飲んだおかげで、少しは緊張状態が溶ける。



「…やっと話せるね。」


ルキの声に真緒は固唾を飲んだ。

何を言われるのか心臓の鼓動が速くなる。



「まず、俺は真緒と同じ人間では無い。」

「そうですよね!

血だらけだったのにいつの間にか治ってるし、血を吸うなんて人間じゃないと思いますよ。」

「その通りなんだけど。で、俺の正体は…吸血鬼だね。

ヴァンパイアとも言うけど。」

「は?????」


出たー!!!!吸血鬼だよ!

おとぎ話の話しかと思っていたら、本当に居るなんて。

夢?

これはやっぱり夢?

まだ、目が覚めてないのか?

やっぱり、現実?


「やっぱり、化け物じゃない!」

「この世界では化け物になるのかも。」

「瞳が赤い時点で化け物ですよ!」


ガタガタと恐怖からか震える。


「そんなに怯えないでよ。

取って食べたりしないから。」


キランと爽やかなほど歯が光る。


「で、普段なら吸血鬼の俺がこの世界に来る用は無いんだが…。

そうもいかなくなった事情ができてね。」


どうやら、深刻な事情があるようだ。


「まさか、人の血を吸い尽くして、人間を滅ぼすとか!!!!!???」


「なんでこの世界と係わりのない、俺がそんな事をしないといけないんだよ?

そうじゃないんだ。話せばすごく長い。」


ルキは深刻げに眉間にシワを寄せ、ため息交じりに首を振る。



あ…これは朝までコースだなと真緒の直感が働いた。

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