第7話

明日、仕事なんだけど……。


早く寝たいのに…。



「あ、お米持ってくるわね!」

ルンルン♪と鼻歌を歌いながら松田芳子は自分の家に戻って行った。



松田芳子を待つ間に、ルキの方を一瞥する。


ルキは楽しげにこちらを見ていた。


「どうしたの?」

ルキは悪戯をした子供のような無邪気な笑みを浮かべる。


「と・・・泊まるって…嘘ですよね?」


「……さあ?」


「え…。」


『冗談じゃない!明日は朝から会議なのに!』


気合を入れないといけないのに、こんな怪しい男に捕まっている自分を呪いたくなる。


「真緒って、気持ちが表情に出やすいよね。」


「…そうですか?」


「うん。分かりやすい。」


「………。」


シーンと場が静まる。




「真緒ちゃんおまたせ~♪お米、食べてね!」


「本当にありがとうございます。大事に食べますね。」


松田芳子が戻ってきて、真緒に10kgの米袋を渡す。



松田さん…重くなかったのかな?

あんなに急いで走って持ってきて。


「真緒先輩、重いですから、俺が持ちますよ。」


ルキがひょいっと米袋を肩に乗せる。


「まー、ルキくんは男らしいのね。感心しちゃうわ。」


うっとりした表情でルキを見る。


「当然のことですよ。」


「まっ!女を大事にする男はモテるわよ~。真緒ちゃん、ちゃんと見張っておかないと駄目よ!」


「え…?」


「なら、おばちゃんはそろそろ失礼するわね。

おやすみなさい!」


「松田さん!この男とは別に何もー…。」


弁解をする隙も与えずに松田芳子は自宅に戻って行った。



「真緒、早く行こう。これ以上人には会いたくない。」


「はい…。はあー。」


真緒とルキは二階の階段を上って、真緒の家に入った。








「狭いお部屋ですがどうぞ。」


真緒は2LDKの部屋へとルキを案内する。


「へー、普通の部屋だな。」


土足でルキは家の中に入ろうとする。


「ストーッップ!!!!」


「え?何?」



ルキの足が動きを止める。


「何って。靴を履いたまま家に上がらないで下さい。

ここはアメリカじゃあないんですから。」


「ごめん。城では土足だから。」


「城?まあ、とりあえず、靴を脱いで上がって下さい。」


ルキは言われた通り靴を脱ぐ。



「このお米はどうする?」


「此処に置いて貰えると助かります。」


「了解。」


米袋を冷蔵庫のそばに置く。


「ありがとうございます。とりあえず、ソファに座っていて下さい。

飲み物でも出すので。」


「うん、ありがとう。」


指示された通りにルキはソファに座る。



真緒はキッチンに向かう。


「はあー…。」


ルキに聞こえないような小さな溜息をつく。

緊張はまだ溶けない。喉が異常にカラカラだ。

真緒はカラカラの喉を潤したかった。



何から聞けば良いのやら……。

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