第4話

人生で一番痛い思いをしたのは、食中毒でお腹を壊し、ベットの上で苦しみ悶えていた時だ。





「…う…。」


真緒はゆっくりと瞳を開ける。


瞳を開けると男の顔がドアップで現れた。


「あ!目が覚めた。」

男の軽い調子の声が聞こえた。


「…あなた…。」

「まだ、体がダルいでしょ?

まだ、寝てていいから。」

「う…ん…。」


男の言われた通り、確かに体が重い感じがする。

あまり力が出ない。


「血は止まっているから。」

男にそう言われて、弱々しい動きで自分の首筋を触ってみた。


『血が出ていない。

不思議だ。

首筋を傷つけられたら生きていないんだろうなと思ったけど。』


真緒は自分は生きていないだろうと思っていたから血が止まっていることに疑問を抱いた。


「ごめんね。

俺が血を吸ったから。」


全くもって、その通りなのだが。


「ふっ…。」

おかしくて笑いが出る。悪いことをした自覚はあるのだろう。

見る限り、まだあどけなさが残る少年のような男だ。

しかし、赤い瞳なのは本当だ。

暗闇に光る赤い瞳が不気味さを醸し出す。


「あ、お姉さん笑ったね。良かった。キレてるんじゃないかと思って不安だったんだ。」

「キレるというか…。(不審者だ。)」

「なに?」


グイッと顔を近づけてきて、瞳を覗き込まれる。


『だから近いって!』っと思いながらも、変に刺激しても怖いので、目線をそらした。


「何でもありません…。

もう大丈夫ですので、離していただけませんか?」

あくまでも、冷静に、隙を見せず。


「本当に、もう平気なの?」

人の首筋に噛み付いて、挙句の果てには血を吸うという狂気な行動をしておきながら、優しい言葉だ。


心配するくらいなら吸わないで欲しい。

っと真緒は思った。


「はい、大丈夫ですので。」

「そう…ゆっくり起き上がって。」


なんで急に紳士的になっているんだ。

ますます怪しい。


真緒は男の腕から離れた。

しかし、男の腕は再び真緒の腕を掴み、真緒が立ち上がれるように支えた。


『やけに優しい。しかし騙されるな。この男は不審者&犯罪者だ。血を吸うって異常でしょう。吸血鬼みたい…まさか…???』


「お姉さん、ありがとう。助かったよ。」

少年のような顔でお礼を言われた。

不覚にも可愛いっと思ってしまった。


『騙されては駄目よ!しかし、赤い瞳だけど、顔は怖いくらいに整っていて、肌も透き通るような美しさを放っている。整形かな?今、流行っているしな。』


少し気になってしまった。

この男に興味が湧いてきた。

怪しい見た目で、狂気な行動をされたが不思議な事も起きているし…。


「あの…なんで、瞳が赤いんですか?」


「え?」


一瞬の間で場がピリッとなる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る