77話目

「じゃあ、なぜ、彼氏がいるのに、莉蘭はアタシに抱き締められているの?」


「え?」


「嫌だったら、振り解けばいいじゃない」


ぎゅっ…



手に力がこもる












抱きしめたのは私ー




力を込めて抱きしめる



「莉蘭?」


「分かんない…

なんで?

ケイさんずるい!」


痛くなるくらい、ケイに抱きつく。


行き場の分からない

この感情を、強く抱きしめることで目の前のケイにぶつける。




「莉蘭、そうよ、アタシってずるいの」


耳元でケイが囁やく。


「ケイさん…なんで私だったの?」


ケイの顔を見ると、切なげに私を見ていた。



許してくれと懇願するように言っているかのようだった。



(そんな顔をされたら…何も言えなくなる

ずるいよ…

ケイさん、ずるい)


考えないようにして、忘れようとしたのに…


ギリギリのラインで、踏みとどまっていた


けど、ラインを越えて城壁が静かに崩れ去ろうとしていた



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