67話目

それを、誤魔化すようにケーキを食べる。


「これ、莉蘭の好みに合わせて作ったのよ?」


「ーえ?」


「もう、苦労したわよぉ」


「なんで?」


「なんでって、アンタの喜ぶ顔が見たいからよ」


「あ、あ、そ、そうですか」


ケイの言葉に赤面しそうになる。


ダメダメ、平常心。


当の言った本人は、にこやかに莉蘭の顔を見てきた。


「ケイさん、流石、オーナーです。

このケーキは販売するんですか?」


「…そうね。

莉蘭が喜んで食べてくれるなら、メニューとして出すわ。

そうしたら、アンタ、しょっちゅう、此処に来るでしょう?」


「まさか、本当に私のために作ったんですか!?」


「まあ、ね。

ほら、莉蘭全然お店に来なかったじゃない?

だから、アンタが寄り付くように新メニューを開発したのよ」


「ケイさん、ありがとうございます。

ちょっと、仕事が忙しくて、来れなかっただけですから…」



嘘をつくことによって、いたたまれなくなる。



「そ…う」

「あれ、莉蘭ちゃん、久しぶりー!」



「あ、ちよりさん、お久しぶりです」


店長の原口ちよりが話しかけてきた。


「ちより、せっかく莉蘭と話してたのに何よ?」


機嫌が悪そうに横目で見る。


「まー、まー、お話の最中悪いけど、莉蘭ちゃん、ケイを借りるね。」


「はい、どうぞ」


「なんなのよ?」


「ほら、立花珠里オーナーがあの件について、

ケイと話したいって来てるの」


「えー、アタシは乗り気じゃないんだけどねぇ…

まあいいわ、どこにいるのかしら?」


「ほら、あそこの席に座ってる」


ちよりが指を指した先には

髪の長い綺麗な女の人がスーツをバシッと着て座っていた。

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