66話目

「莉蘭、こっちに来て」


「はい」


カウンターの隅っこの席が莉蘭専用として用意されていた。


「ここに座って頂戴ね」


「ありがとうございます」


ケイ自ら案内するので、あの客は何者かと

席に座っていたお客はコソコソと噂しだした。



「ケイさん自ら案内しなくても良かったんじゃ…」


「あら、アタシが案内したら不満だったかしら?」


「違います、周りのお客さんが噂してるから、ケイさんに迷惑かけたかなって…」


「…言わせておきなさい

さ、莉蘭、このケーキなんだけど…」


コトっと目の前にチョコレートケーキのようなケーキが置かれた。



「わっ!

美味しそう」


「この前、2人でカフェに行ったじゃない。

そこから着想を得て、チョコレートブランデーケーキを作ってみたのよぉ」


ケーキの表面はチョコレートでコーティングされていた。


「中にオレンジピールとレーズンも入れてみたのよ」


「ええ、すごい!

食べてみますね!」


莉蘭はニコニコしながらケーキにフォークを刺すと、

一口目を口にする。


「どう?」


ケイが首を傾げながら聞く。


「生地にブランデーが良く染み込んでいて、

オレンジピールとレーズンで味に深みが増して大人な味で美味しいです!!

うーん、あっという間に食べちゃいそう」


「ふふ、お酒が入ってるから、食べ過ぎると酔っちゃうわよ?」


「っ!!」


莉蘭は目を見開く。


「どうかした?」


「………や、なんでもないです」


あの夜の出来事を思い出してしまった。

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