第50話

「だっ、ダメ!!」


バッとケイの体を引き離すと、慌ててベッドから降りた。


「ハァッ…ア……フー…」


床に座ると息を整える。



「うー…ん…ー」


「ッ!!?」


ケイの声がした。

ビクビクしながら、そっと覗くと



「寝て…る??」



スヤスヤと寝息を立てていた。



莉蘭はほっと胸をなでおろす。



「ケイさん、誰かと間違えたのか………な?」


ははっと乾いた笑いをする。



「じゃー…

ケイさん、おやすみなさい」



莉蘭は静かに寝室を離れた。




寝室のドアの前で莉蘭は立ち止まった。


自分の唇に触ると、濡れていた…



(私、ケイさんとキスしちゃった…

こんなの私らしくない。

きっと、ケイさんは寝ぼけて、する相手を間違えたんだよね。

これはきっと事故だよ…事故!)



事故にしないと都合が悪かった。






彼氏の存在を忘れ、理性を失いかけたことを認めたら、彼氏との関係が変わってしまう可能性があった。


だから、莉蘭は先程のキスを全力で否定する事で、体制を保つ。



「帰ろう…」


莉蘭は眞帆を叩き起こし、タクシーを呼んで帰ることにした。

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