第38話

「ちょっと、顔を上げて頂戴?」


「…はい…」


女は恐る恐る顔を上げた。

すると、ケイは笑顔を向ける。


「莉蘭から事情は聞いたわよ。

けど、アタシね、仲良くなった人としか連絡先は交換しない主義なのよ。

アタシと仲良くなりたかったら、アタシのお店に来て頂戴。」


「えっ!?

いいんですか?」


「勿論。

ただ、貴方がどういう気持でアタシと仲良くなりたいのか分からないけど…

恋愛感情なら諦めて頂戴ね。

アタシにはもう、心に決めてる人がいるのよ。

他の人なんて興味がないのよぉ」


「え…そんな!?」


「ふふ…こんな意味の分かんないオネエより、

ちゃんと貴方を見てくれる人を探して頂戴ね」



「だ、誰なんですか!?

やっぱり、男の人なんですか!?」


「そーねー…あ、手のかかる子供かと思ったけど、

意外と頼りになる人かしらねぇ…

でも、ほっとけない人よー」


「えええー!

…分かりました…

けど、ケイさんと友だちになりたいです。

だから、お店に行きます」


「待ってるわね」


「はい、本当怖がらせてすみませんでした」


「怖かったわよ!

こんなこと、もう止めなさいよ?」


「はい!!」


女はスッキリとした表情をしていた。

そして、クマの人形にナイフをぶっ刺して、道端に置くと、スキップをして帰っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る