第23話

ケイは店員の動きをじっと凝視している。


その様子を莉蘭は苦笑いで見た。



「莉蘭、ここの店員、

立ち振る舞いが洗練されてると思わない⁉︎」

「たしかに、

皆さん、とても綺麗な姿勢ですよね」

「そー。

あの、猫背のユーリンに見てほしいわぁ!」 

「ユーリン、ゲームばかりしてるから、猫背は治りませんよ」

「それもそうねぇ〜

ほら、メニュー表…

っていいたいとこだけど、私が好きに頼んでもいいかしら?

もちろん、莉蘭の好きなものは頼むわよ」

「えっ?

はぁ、まぁ、大丈夫ですけど…」

「今日は付き合ってくれたお礼に、

ここはアタシが奢るから安心して。

その代わり、今から頼むものを食べてちょうだいね」


ケイはにっこり笑うと、店員を呼び、長々と注文した。

そして、暫くして、頼んだものが

テーブルの上いっぱいに置かれた。


「ケイさん、こんなに食べるんですか⁉︎」

「そうよぉ、美味しそうなの全部頼んじゃった」

「やっぱり、これって、ライバル店の視察…?」

「莉蘭、何言ってんのよ。

違うわよぉ!」


ケイは否定するが、目の奥が笑っていない。

これは、お仕事モードだ。


「ほら、アンタの分!

アンタ、ティラミスが好きでしょう?

ここのティラミスはラム酒を使ってて、

濃厚な大人のティラミスで、超人気らしいわよぉ」

「えっ、まさか、私のために調べてくれたんですか?」

「そうねぇ。

元気のない、アンタを元気付けたかったのよ!」

「ケイさ…ん…

いや、ケイ様ぁ!」


うるうると涙目になる。

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