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第64話
構図は無事に決まった。
あとは聖城さんのピアノを弾いている姿を見て、リンクさせ、私の創造力で描き上げる。
夏目前の水曜日、音楽室の窓からは少し暖かい風が吹いていた。
ピアノの音色を聴きながら、乙葉は目を瞑る。
「絵咲さんは本当に俺の演奏が好きなんだな。」
「え?」
いきなりそんなことを言われ、乙葉はビックリする。
「飽きもせずに、毎週水曜日に必ず来るから気になったんだ。」
「だって、わたしには水曜日しか聖城さんのピアノを聴くことが出来ないから…それに…」
ちょっと、恥ずかしそうに俯く。
「なんだ?」
「聖城さんに会えるのも水曜日のこの時間くらいしかありませんし。」
「…そうなのか?
学校で何時でも会えるじゃないか?」
「聖城さんと学校であえるなんてレアですよ!」
「そっ、そうなのか?」
俺って、そんなに姿を見ないのか?
逆に、俺は絵咲さんをよく見かけるんだけどな。
あの、男とよく一緒にいる所を…。
その光景を思い出して、少し嫉妬してしまう。
「聖城さんは、なぜ、毎週水曜日にピアノを弾くんですか?」
「あー、そういえば、絵咲さんに言ってなかったな。」
聖城は少し考え、フゥッと呼吸を整える。
そして、決心したようだ。
「水曜日はルミ子が死んだ曜日なんだ。
ルミ子は俺が人前でピアノを弾く事をやめた、きっかけになった人なんだ。」
「え?」
乙葉の動きが止まる。
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