第63話

「こうか…や、これ?」


何種類もの角度で聖城をババッと描いていく。


そして、ある程度できた。


「聖城さん、お疲れ様でした。」


「も、もういいのか?」


「はい。あとは聖城さんがどの角度がいいか選んで下さい。」


「は?俺が選ぶのか?」


「はい。

なるべく、聖城さんの嫌な構図では描きたく無いので。」


「そうか。

うーん…」


正直、乙葉に描かれるなら、どの構図でも良かった。


「これがいいかもしれないな。」


1つの絵を指差す。


「あ、いいかもしれませんね!

あとは、聖城さんがピアノを弾いてる姿を観察させてもらいます。

そして、今の構図と重ね合わせて…」


うんうんっと乙葉は満足そうにうなづく。


「描けそうか?」


「はい!」


聖城はほっとした。


「長居しても悪いし、今日は失礼する。」


「あっ、はい!」


「充実した時間だった。」


「私も楽しかったです。

玄関まで送ります!」


「すまない。」


帰り支度を済ませ、玄関まで聖城を見送る。


「まぁー、聖城さん、またいらしてね?」


母親は笑顔で見送る。


「はい、お邪魔しました。

じゃあ、絵咲さん、また、学校の音楽室で。」


「分かりました!

聖城さん、さようなら。」



聖城は静かに玄関のドアを閉めた。


「また、来てくれるかな…」


玄関のドアを暫く見つめていた。

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