第53話

会場を出た2人は歩いていた。


「パーティーはまだあったのに、中途半端に出てきてよかったんですか?」



「いいんだよ!」


その顔はどこか晴れ晴れとしていた。


「聖城さん、とっても楽しそうですね!」


乙葉は笑顔で言った。


「あんなに人前で弾くピアノは楽しかったんだな…忘れていたよ。」



「聖城さん、本当は皆の前で弾きたいんじゃないんですか?!」


聖城は乙葉に向き直る。



「絵咲さん、俺はもう、解放されても良いのだろうか?」


「聖城さんの心は聖城さんのものです。

誰にも縛ることは出来ません。

だから、聖城さんの心の行くまま、自由に行ってください!」


腕を思い切り広げた。


「お前、そんなに明るい奴だったんだな。

全く、感心するよ。」


クスッと笑う。


そして、空を見上げた。


「自由にか…。」


もう、君の言葉を繰り返さなくていい。

君にはもう、このメロディーは聴かせてあげられないから。

今は、隣にいる人が聴いてくれるんだ。


ルミ子さん…


いつか、俺がそっちに行ったら、聴かせてあげるからな。

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