第52話

そして、乙葉を見つめると、ギョッと驚いた.


泣いている?


聖城は慌てて乙葉に駆け寄る。


「絵咲さん、なんで泣いて…」


「ブラボー‼︎」


「聖城さん、素敵よー‼︎」


観客が、聖城を取り囲む様に拍手と声援が降り注ぐ。


「え?や、ちょ…」


聖城は観客の反応に、圧倒される。


「聖城さんの演奏、とっても素敵でした‼︎」


乙葉は目に涙を浮かべ、思いっきりの笑顔で、聖城に言った。


聖城は乙葉を呆然と見つめ、突然、笑い出す。


「ぷっ、お前、泣くか笑うかどっちかにしろよ!」


「あはっ、だって、なんだかよく分からないから…!」


「…そうか。

絵咲さん、帰るぞ。」


「え!?」


グイッと乙葉の手を引き、会場を去ろうとする。


「聖城琴臣君、君の実力は本物だ!

賞賛に値する!」


小室は大きな声で言った。

聖城は足を止めて、振り返らずにいた。



「…ああ、知ってる。」


乙葉だけは聖城の笑みを見た。

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