第48話

「やあ、聖城!君が来たとは、どんな風の吹き回しかい?」


「一宮か。

まあ、なんとなくな。」


「ふーん。

そんなに目の前で小室さんの演奏を聴くの?」


「まあ、久しぶりに聴くからな。」


「へえ…じゃあ、僕もここで聴こうかな?」


一宮は聖城の隣に行く。


「なんで揃いも揃って、お前たちは近づくんだ?」


聖城の周りは一宮兄妹にガッチリ固められていた。


「聖城さん、一宮さんたちと本当に仲良しなんですね!」


「絵咲さん、笑ってないで、こっちに来てくれ。」


「はい!」


乙葉が近づくと、聖城の手が乙葉の手を掴み、手を繋いだ状態になった。


「ぇ…!?」


手を繋がれ、乙葉は目を見開く。


「こうしていろ。」


「はぃ…。」


乙葉は恥ずかしくなり、顔を俯かせた。


聖城さんの顔が見れないよー…。


直ぐ隣に聖城の綺麗な横顔があった。


そして、しばらくすると、会場のライトが暗くなり、グランドピアノの周辺が明るくなる。


どこからともなく、拍手が起きる。


小室リオンは颯爽とグランドピアノの前を歩き…

足を止めた。


「この度は小室リオンのプロデビュー記念パーティーにご来場いただき、ありがとうございます。

ここで、私から、皆様に愛をこめて、ピアノ演奏をプレゼントいたします。」


一斉に拍手が送られる。


満足そうに小室は笑うと、ピアノの前の椅子に静かに座る。


乙葉はワクワクしていた。


聖城さんの演奏と、どう違うのかな?



チラッと小室は聖城を見ると、不敵に笑う。

そして、力強く弾き始めた。


壮大で生命力にあふれる音色が会場を包む。


そして、指は鍵盤の上で滑らかに動きを止めることなく動き続ける。


乙葉はその技巧に目を見開く。



す…すごい!

これがプロの演奏…


しばらくして、演奏は終わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る