第44話

「ふーん、似合ってるな。」


「ほ、ほんとですか!?」


「ああ。

綺麗だ。」


聖城は恥じらいもなく言葉を口にする。


「あ、ありがとうございます!」


乙葉は照れたように笑った。


「さ、いくぞ。

手を貸せ。」


優しく手を掴まれ、軽く腕を組む。


「あ…聖城さん!?」


聖城の行動に、乙葉の体温は急激に上がる。


「今から、お前は俺のパートナーだ。」


「そ、そんな事、急に言われても…」


心臓がドキドキして煩い。

緊張なのか、恐怖なのかよくわからない感情が乙葉を襲う。



聖城のリードにより、パーティー会場に来た。


中に入った途端、ザワっと周囲がざわめく。




「きゃ、聖城さんよ!素敵!」


「まあ、期待しちゃうわ!」


「もしかしたら、聴けるかもしれないわよ!」


女性たちから黄色い声がする。

乙葉の存在など、気にしないのか、聖城に視線が一気に集まる。


「聖城さん…凄い人気ですね…。」


「いつものことだ。気にするな。」


いつもの事って?聖城さん、人気者なんだ…


しかし、一体、なんのパーティーなのか、わからないまま来てしまった。


「Ohー!コレはコレは、聖城琴臣君じゃないか!」


スラリとしたキツネ目の男が乙葉たちの目の前に来た。


「小室リオンさん、今日はお招きいただき有難うございます。」


「はは、今日は僕のプロデビューを記念したパーティーなんだ。

ぜひ、君にも祝ってほしくてネ。

琴臣君、楽しんでくれたまえ。」


目の前の男はいやらしい笑みを浮かべ、聖城を見た。

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