変化

第38話

最初は人の演奏を勝手に聴く失礼なやつだと思った。

いきなり逃げるし。でも、絵は上手く、俺が惚れ惚れするくらいの腕前だ。

絵を褒められたら、えらく喜んでいた。

かと思えば、俺と話すときは変に挙動が不審になったり、いきなり人の手を掴んで迫ってくる…行動が掴めない変なやつ。

でも、笑顔が可愛く見えたり…

泣き顔はあの子に似てたり…

全く、不思議なやつだ。



今日も翔太ってやつと絵咲さんは連んでいた。

翔太ってやつとは友達なんだよな?

俺は無意識のうちに絵咲さんを目で追っていた。


「聖城、こんなとこで何してるんだ?」


「町田…ああ、ちょっとな。」


「ふーん…屋上から気になる女でも観察しているのか?」


「は!?何訳のわからないことを言っているんだ?」 


「だって、聖城、さっきからずっと一点を見ていたみたいだし…。

その先には、あの子かい?」


町田は絵咲さんを指差す。

バレた。

さすが、警察官の息子だ。

勘が鋭いというのか…。


「見てたら悪いか?」


「別に。

女を毛嫌いしている聖城にしては珍しい事もあるもんだと思ってね。」


「はぁ?俺がいつ、女を毛嫌いしたんだ?」


「いつも、話しかけてくる女子達をあしらい過ぎて、女なんてうんざりだとか言ってるじゃないか。

俺からしたら、羨ましいけどな。」


「そんなこと言うわけないだろ。」


「いや、言ってたな。

でも、あの子の隣にいる男は彼氏かな?」


町田は乙葉の隣にいる男に視線を向ける。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る