第35話

「昔は夢中で弾いていた。

けど、今は…お前のような情熱は…抱けなくなってしまった。」


なぜですか?っと目の前の聖城に聞くことは出来るだろうが、切なげな横顔を見ると、乙葉は口をつぐんでしまった。


「なぜだろうな…

あんなに人前で弾くことが好きだったのに…。」


「聖城さん…。」


きっと、まだ、聖城さんの心を覗くことは出来ない。


「って、なぜ俺はお前にこんな事を話しているんだろうな?

すまない、なぜかしんみりしてしまった。」


「私は気にしていませんよ。」


「そうか…。」


「絵咲様の自宅に到着しました。」


運転手は静かに言った。


「ああ。

着いたぞ。

家まで荷物を運ぶのを手伝ってやる。」

「聖城さん、有難うございます。」


聖城は車から降りると、画材道具一式を両手いっぱいに持つ。


「荷物は玄関の中に入れていいか?」


「はい!」


乙葉は玄関を開けた。

聖城は玄関に入ると、画材道具一式を丁寧において行く。

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