第34話

「なるべく、聖城さんと分からない様な構図にします‼︎だから…お願いします。

私は貴方を描く事ができたら、幸せです。」


「…分かった。

ただ、俺は忙しいから、気が向いた時にしか付き合わないぞ。」


乙葉に根負けした。


「有難う御座います!」


ブンブンと聖城の手を動かす。


「絵、絵咲さん、お前の熱意は分かったから、いい加減、手を離してくれ!」


聖城は少し焦った様子で乙葉の顔を見ながら言った。


「ご、ごめんなさい!

つい、熱が入ってしまって…」


「絵咲さんもこんなに積極的な一面があるんだな…

絵描きというのは絵のことになると、みんなこんなに前のめり気味なのか?」


「びっくりしましたよね。

でも、それくらい絵が好きなんです!」


「…絵ね…。」


聖城の表情が影に曇る。


「聖城さんもピアノを弾く事が好きじゃないんですか?」


「…そうだな。

弾くのは好きだよ。」


フッと悲しそうに笑う。


乙葉はそんな聖城の表情に複雑な気持ちを抱く。


聖城さん…何か悩みがあるのかな?

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