第33話

見送りもほどほどにして、聖城はスタスタと歩き、自分の車に乗り込んだ。


「ほら、絵咲さんも乗ってくれ。

家まで送ってやる。」


「はい、お世話になります。」


「家はどこら辺なんだ?」


聖城の問いかけに、乙葉は答えた。


それを聞き、車はゆっくりと発車する。


学校を通り過ぎるー


「一宮と会ってどうだったか?」


「はい、とてもいい刺激を受けました。

一宮さんと私には、共通点もあって、話に熱が入りましたよ!

それに、道具までいただきました。」


ニコニコと乙葉は笑顔で話す。

聖城は満足げにしていた。


「それはよかった。

連れてきた甲斐があったな。」


「聖城さん、私、秋のコンクールに作品を出してみようと思うんです.」


「へえー、いいんじゃないか?」


うんっと頷く。


「それで、モデルなんですが…引き受けてはくれないでしょうか?」


「は?俺か⁈」


「はい!私は聖城さんを描きたいんです!」


眼力を強くし、聖城の目をまっすぐと見つめる。

圧が凄い。


「え、ちょっと、お前、コンクールって…」


「はい、色々な人に見られると思います!」


「それはいくら俺でも…」


「聖城さん、お願いします!」


聖城の手を取り、ギュッと握る。


「この通り!」


「あー、ええ…」


運転手の方に助けを求めたが、運転手はニヤニヤと含み笑いをしていた。


ダメだ、運転手は今の状況を面白がっている様だ。

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