第30話

「え、でも、こんな高価なもの、頂けません!」


「乙葉ちゃん、僕は君の”好きな人を描いた絵”を見てみたい!

是非、これを使って、思う存分描いてみてくれ!」


「あー…。」


「聖城が認めた子だ。

君は才能がある。だから、キャンバスに想いをぶつけてくれ!楽しみにしているよ!」


興奮して、捲し立てた。

乙葉は狼狽えながらも、画材道具一式を受け取る。



…思いをぶつける…

聖城さん…

このキャンバスに、私の思いを込めて描いてみよう!


キラキラと乙葉の瞳の色が変わる。

それを見た一宮は笑みを零す。


「私の描く絵は破り捨てられるような、人を不愉快にさせる作品なんだと思っていました。

でも、今日、一宮さんの情熱に触れて、私も勇気が湧いてきました!

もう、迷いません!これで、聖城さんを描いてみせます‼︎」


「はぁ、若い子の思いはエネルギーにあふれた壮大なパワーを感じるよ‼︎

そうだ!秋に絵画コンクールがあるから、それに応募してみたらどうだい?」


「コンクールですか。」


「挑戦してみるといい。

きっと、乙葉ちゃんにとって、いい経験になるよ。」


「はい、考えてみます。」


一宮から良い刺激を受けて、アトリエを後にした。

高級画材道具一式を両手いっぱいに抱える。


「さあ、聖城は和美と仲良くしているかな?

行ってみようか。」


「はい!」


広い屋敷を歩く。


すると、何処からともなく、綺麗なピアノの音色が奏でられてくる


あ…この音色は…聖城さんのピアノの音だ…

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