第24話

「聖城さんはなんで、学校でピアノを弾くんですか?」


「あー…お前には言わない。」


「そうですか…。」


まだ、心を開いてくれたわけではないみたい。

無理に知りたいわけじゃないけど、聖城さんとの距離は遠いな…



「いつか、教えてくださいね。」


乙葉は控えめな笑みを浮かべた。


「考えとく。」


「あー、どんな画家さんに会えるのか、楽しみだなー!」


無理やり話題を変える。


聖城は少し、申し訳なさそうに乙葉を見ていた。


「もうすぐだな。」


いつの間にか、結構な距離を歩いたらしい。


緩やかな坂を登り、木々が溢れる場所に出た。


自然にあふれた場所に、乙葉は目を丸くして、見とれていた。


「学校の近くに、こんなところがあったんですね!」


「ああ。

この木に囲まれた奥に住んでいる。」


聖城は門の前にある呼び鈴を鳴らす。


「入っていいそうだ。」


「はい、お邪魔します。」


2人は門を通り過ぎ、玄関まで長い道のりを歩く。


「敷地が広過ぎませんか?

玄関までの道のりが遠いような…?」


「そうか?

これくらい、普通じゃないのか。」


これが普通だと言わんばかりの態度だ。



聖城さんはお金持ちとの噂だ。

その知り合いも当然、お金持ちということか。

乙葉は妙に納得した。


歩いてやっと、玄関に着いた。


呼び鈴を鳴らす。


暫くして、ドアが開いた。

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