第19話

「俺は絵咲さんの描く、俺の絵が好きだよ。

綺麗に描いてくれるしな。

自分で言っていると、ナルシストみたいだけど…。」


聖城さんは照れたように笑う。


話してみて、いい人だって分かる。

言葉は直球な事が多いけど、嫌味じゃなくて、私の事を思って言ってくれる。


ああ、やっぱり聖城のこと、好きだな…



「過去の絵咲さんを馬鹿にした奴らはもう居ない。

だから、もっと、堂々と描いてみたらどうだ?

絵咲さんの描く絵は魅力的だと思う。

俺は絵咲さんの作品をもっとこの目で見てみたいと思うんだ。」


「そんなこと言われたら、恥ずかしいです。

けど、聖城さんの言う通りですね…

私、もっと、堂々と絵を描いてみます!」


ぱあっと乙葉の表情が明るくなる。


「………っ!」


聖城はその笑顔に目を見開く。


そして、薄っすらと頬を赤く染める。



ただ、笑ってるだけじゃないか…

なのに、なぜ、かわいいと思ってしまうんだ…?


自分の感情がわからない。


「お…おれの知り合いに画家が居るんだが…」


「はい?」


キョトンとした顔でこちらを見てくる。


なぜだ、そんな様子も目が離せない。


「会ってみるか?」


「えー…!?」


まさかの聖城さんからのお誘い!?


口元が震えてくる。


「あああ、その、は、はい!」


「そそ、そうか…」


ふたりともギクシャクして可笑しくなる。


「な、なら、今週の日曜日…会うか?」


「は、はい!」


「が、学校の校門前で10時に待ち合わせで、どうだ?」


「だ、大丈夫です!」


「そ…そうか。

じゃ、じゃあ、その時間に…

今日はもう帰る。

じゃあな。」



聖城さんは私の顔を見ずに帰っていった。




1人になった私は先程のことを頭でリピートしていた。


日曜日に聖城さんと会う!?

これって、デートなのかな!?

信じられない!

聖城さんにプライベートで誘われてしまった。


私の人生で一番の衝撃的展開だ。

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