トラウマ

第17話

彼は自由に今、この瞬間を楽しむ様にピアノを弾く。


その姿を私はスケッチブックに自由に描いていった。



そんな水曜日を何度目か繰り返した、ある日…


「絵咲さん、絵を見てもいいか?」


聖城さんは唐突に言った。


「はい、どうぞ。」


少し緊張しながら、スケッチブックを渡す。


それを無言で受け取り、1ページ、1ページ時間をかけて見ていく。


聖城の真剣な表情に、乙葉は変な緊張感がこみ上げてくるのを感じた。



「やっぱり、上手いな。」


「そう…ですか?」


嬉しくなり、頬を赤らめる。


「ほら、ここを見てみろ。」


聖城はスケッチブックを指差す。


乙葉は無意識に聖城の隣に行き、スケッチブックを見る。


「この部分、凄く上手く描けてるじゃないか。」


「あ、有難う御座います!」


聖城の褒め言葉に顔を熱くする。


「なんでコソコソ人目を避けるように絵を描いていたんだ?」


「え…?」


「この実力なら、賞の1つや2つくらい取ったことがあるんじゃないか?」


「そ…それは…。」


聖城の視線に乙葉は息をつまらせる。

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