第16話

「そういえば…」


ピアノを弾くのをやめて、こちらを見てくる。


「あの中庭で一緒だった男…友達にしては随分親しそうだったな。」


「え?」


「付き合っているのか?」


「は…えッ!?

ま、まさか!

翔太とは腐れ縁で、昔から仲がいいだけで…」


「そうか。

なら、いいんだ。」


え…なんで聖城さんがそんな事を聞いてくるんだろう!?

まさか聖城さん、気になるのかな!?

え…どうしよう…。



少し期待してしまう。


「な、何でそんな事、聞くんですか?」


「彼氏に俺と一緒に居るところを見られたら誤解されるだろ?

だから、確認したんだ。」


「…そうですか。」


一気にがっかりしてしまう。

そうだよね、彼氏が居て、他の男と2人っきりで居るところを見られたら、浮気って誤解されちゃうよね。

聖城さんにも迷惑がかかる。


自分の浅はかな思考に羞恥心がこみ上げてきた。



「これで、気にしなくてよくなるな。」


「は、はい!

彼氏はいません。

だから、気にしないで下さい。

聖城さんに気を使わせてごめんなさい。」


「いいんだよ。

絵咲さんも俺を気にせず、自由にするといいさ。」


「はい。」


聖城は再びピアノを弾き始める


人が居るのなんて気にせずに、1人の世界に入り込んでいる様だ


聖城さん、やっぱりピアノを弾く姿綺麗だな…


手が無意識に動く。


紙に鉛筆で目の前の人物を描いていく…


2人だけの空間が出来上がる。


人には内緒の特別な空間。

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