第6話
私はノートを指差して、空いた口を塞げないでいた。
「どうやら、お前ので間違いないみたいだな。」
「なっ、中身、見ましたか?」
「ああ。
確認のため、中身は見させてもらった。」
「あー…見たんですね。」
もう、終わった。
後は、気味悪がられて、暴言吐かれるかな…
気分が落ち込み、俯く。
「この絵って、もしかして俺を描いているのか?」
ピアノを弾いている姿を描いた箇所のページを開いて、私に見せてくる。
アア、ヤメて…
まるで、公開処刑をされている気分だ!
描かれた本人も、自分の事を描かれていると分かったらしい。
「…はい。
あなたを見て描きました。
気持ち悪いですよね。
勝手に描いてすみませんでした!」
勢いよく、お辞儀をする。
罵声でも浴びせられるのかな…
再び、同じトラウマを経験する…
「へー、俺ってこんな感じでピアノを弾いてるのか。」
じーっとノートを凝視する。
「…ちゃんと、処分するので、安心してください!」
「処分…?
なぜだ?」
キョトンとした表情で見つめられる。
「え?
だって、あなたに許可なく勝手に描いていますし。
見知らぬ相手に描かれるのって気分が悪くないでしょうか?」
「良く描けているじゃないか!
処分するとか言うな。
俺はこの絵、好きだよ。」
そう言って、目の前にいる人は笑う。
その笑顔に時を止められた。
「あ…うそ…。」
そんな事、初めて言われた…
しかも、目の前の相手は笑顔で喜んでいる様子だ。
嬉しさで舞い上がりたい。
この気持ち、どうしたらいいの…!?
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