第4話

悲しくなってくる…


なんでかな…


涙が…



「あ…」



思わず声が出ていた。


だって、あの人と目が合ってしまったから!!


「…」


じーっと見つめてくる。


無断で聴いているのがバレてしまった!


「あ…ごめんなさい!!」


だっ!!



いたたまれなくなり、その場から逃げ出した。



「あ、お前!」


あの人の怒ったような声がした


けど、振り返る事は出来なかった


ついに、見つかってしまった。


毎週の楽しみがなくなった…


明日からどうすれば…



逃げ場を探し、私は無意識に教室に戻ってきた。


すると、翔太が私の机の上で、怠そうに座っていた。


「乙葉、どこ行ってたんだよ?」


「あ…翔太!

ちょっと、調べ物をしに、図書室に行ってた…。」



「もう、勉強はいいのかよ?」


「うっ、うん!

なんか、今日は疲れちゃった!」


「ふーん。

じゃ、帰るか。」


「そうだね!…あっ!ノート!」


急いで逃げたから、ノートと鉛筆を音楽室のドアの前に置いてきちゃった!


ノートには、あの人がピアノを弾いている姿がデッサンされている。


やばい…あの人に見られたら、気持ち悪い女と思われてしまう。


どうしよう…



「ノートって、勉強用のノートか?」


「あっ、気にしないで!

ただのノートだから!」


「ふーん…

絵を描いているノートじゃないのかよ?」


「そっ、そんなわけないじゃない!

私、絵はもう描いてないんだよ!」


慌てて否定する。



「そうかよ。」


翔太は拗ねたように言う。


「翔太、先に自転車置き場に行っててくれないかな?

先生にちょっと用事あったの思い出して…」


「…なんだよ、めんどくせーな。

早く来いよ。」


「ごめん!今度、購買のパン奢るから!」


「りょーかい。」


翔太は少し機嫌を直し、先に教室を出て行った。


それを見計らい、急いで音楽室に向かう。

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