第73話

屋敷に帰って来た。


誰にも聞かれないように、結夏と一緒に自分の自室に入る。


そして、結夏を目の前にして…



「充様、一体何をされるつもりですか?」


結夏は好奇心に駆られる。


「そうだな…北條流星に協力する人やつらを特定し消す。

でないと、温溝先生の二の舞いになる気がする…」


「温溝先生は公然わいせつで捕まったのでは?」


「違うな…

北條流星はあの時、俺を見て笑っていた。

温溝先生は奴に協力し、失敗したため、邪魔になって奴に消された」


「まさか…」


結夏の表情から笑顔が消える。


「北條流星は邪魔者はあらゆる手を使って排除する性格らしい…

なかなか嫌な敵だな。

恐らく、俺のことも消したくて仕方ないだろうな」


「…それは充様の世話役として、見過ごせませんね…

充様が逮捕されると私が困ってしまいます」


結夏は充の目を真っ直ぐに見つめた。


その視線にドキリとする。


「な、なぜだ…?」


期待する言葉なんて得られないのに…


少し期待してしまう自分がいた。



「……まだ、ゲームが終わっていませんから」



結夏は飄々とした顔で言う。


「っ、ああ、そうだな、ゲームが、終わってないからな…」



少しガッカリする。



「では、北條流星をがっちりマークしますか?」


「いや…それは危険だ。

きっと、俺の世話役である結夏は北條流星に警戒されている。

情報はある人物に頼んである。

お前は俺と一緒に居ろ。

なるべく一人になるな…」


「私は大人です。

充様に行動を制限されるのは感心しませんね。

それに、自分の身は自分で守れますよ?」


「はあ…お前は馬鹿か!?

世話役のお前になにかあったら、誰が俺の世話をするんだ?」


「え?」


結夏は意表を突かれた。



まさか…


やっと、充様は私を世話役と認めて頂いたのかしら?


「充様…私が世話役と認めて下さったのですね?」


「は?」


「嬉しいですね…人を道具にしか見ていない充様に認めていただけるなんて!」


「…前言撤回。

誰が世話役と認めたって?」


「だって、そうでしょう?

充様の世話役は私しか有り得ないということですよね?」


結夏は充の手をぎゅっと握った。


それ以上の発言は笑顔で有無を言わせない。



「ーーーあー!そうだ、結夏、だから、北條流星を潰す協力をしろ。

特別ボーナスを支給する」


「…はい、畏まりました」


お金なんていらないけど、充様と行動するのは飽きないからいいわ。



次はどんな充様を見せてくれるんでしょうか?

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