第65話

「それに…万里子さんは充の事を大変気に入っているそうじゃないか!」


「いえ、それは昔の好と申しますか…」


「宝来様、万里子様は充様のことをフィアンセにしたいと申していました」


「なに!結夏さん、それは本当かね!?」


「はい」


「ちがいますよ!?

父様、万里子さんが勝手に言っているだけですから、勘違いなさらないで下さい!」


慌てて否定するが、父様は上機嫌にシャンパンを飲んだ。



完全に誤解されてしまった。



「充よ、財前万里子さんを傷つけるようなことはするなよ。

東京大区銀行とは深い繋がりだ。

宝来グループにとっても重要なビジネスパートナーだからな」


「…もちろんです…」


言葉を飲み込むしかなかった。



そして、地獄の晩餐が終わった。








自分の部屋に戻ると、コンコンとノックされた。


「誰だ?」


「充様…ご挨拶を…」



帰る装いをした結夏が居た。



「わざわざ、挨拶はいい…もう帰れ」


はあっとため息混じりにいえば、結夏は近づいてきた。


「充様…先程のことですが…」


「なんだ?」


苛ついた様子で返事をする。


「なぜ、財前万里子様の事を話題にしたのか分かりますか?」


「はあ?なぜ?知らないな!」


「充様は先日言いました。

私に異性とイチャイチャするのはルール違反じゃないのかと」


「あ、ああ、言ったな」


「充様もルール違反を犯しました。

財前万里子様とイチャつき、フィアンセなどの発言までされていましたね」


「そ、それは、あいつが勝手に言っているだけだ!」


「いいえ…しかも、私が見ている前でほっぺにキスまで…

立派なルール違反です」


結夏は椅子に座っている俺の目の前まで来た。



「充様、これをご覧下さい」


スマホの画面が表示される。



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