第66話

「え…まさか…」



ルール違反を犯したから、あの動画を上げたのか!!?




充の顔が真っ青に変わる。


「ふふ…チューウーブからテックトック…ツイットターまで上げています」


結夏は不敵に笑う。



「あれはどう考えたって、虚言癖のある女による事故だろう!

今すぐに取り消せ!」


「…私はそんなに甘くありませんよ。

充様、あんなモノを眼の前で見せられ、ガッカリいたしました。

私とゲームをしている最中なのに、他の女性とイチャイチャするなんて…

これでは、今の充様に惚れることは一切ないでしょう」



結夏の顔が思いっきり近づいて、俺の表情を凝視する。



「もう、ゲームオーバーなのか?」



絶望的な声で言う。


結夏の目が見開かれる。




「期限は3ヶ月と決まっていましたが…

あら、動画はまだ未公開設定でした」


結夏はわざとらしくスマホの画面を指差す。



確かに、動画はまだ未公開設定だった。



「ゲーム続行の条件は財前万里子様のフィアンセ発言を取り消すこと。

このゲームに他の者を介入させることは許しません。

それが出来なければ、ツーアウトということで、即刻動画を公開します。

期限は一週間。

充様に出来ますか?」


「…いいだろう。

もともとは俺が異性とイチャつくのはルール違反だと言ったから起きたことだ。

財前万里子に訂正させるように言う。

そうしたら、ゲームは続行してくれるんだな?」


「ええ、もちろんです」


そういって、結夏の指が充の顎に触れる。


つぅっと指が遊んだかと思った瞬間、顎をくいっと上に上げた。


鼻と鼻がくっつきそうなほどの至近距離で結夏は笑顔で…



「もし、撤回が出来たら、ボーナスタイムとして、デートに行きましょう。

期待していますよ?」


「あ、ああ」


結夏の顔が離れる。


そして、充から離れると、小さい声でおやすみなさいと言った。










世話役のあんな顔は初めて見た…




心臓の鼓動は速くなっていた。

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