第61話

ドシンドシンとわざとらしく音を立て、登壇すると、充の腕を掴む。



「なっ!?」


充は驚きと共に、身を強張らせる。




空気の読めないこの女は一体何だ!!?



充は逃げ出そうとするが、女の力は強い。



「あれは、学園のマドンナ、財前万里子様!!!?」


男子生徒が声を張り上げた。



「そう、マドンナのアタクシに相応しい殿方ですわぁ!

いいこと、このアタクシのフィアンセである充さんに近付く女がいましたら…

容赦なく消させていただいますわぁ!」



「はぁ?」


この女は何を勝手に言いたい放題言っているんだ!?


虚言、妄言もいい加減にさせないと…


今すぐ訂正させねば、後々面倒な事になる!



「君が私のフィアンセ?

何を世迷い言を言っているのかな…?

さあ、早く戻るとい「っちゅ!」」



はあ?



頬に感触が…?




「「ギャー!!!??」」



ミツルーズたちの絶叫が響く!




「マ、マドンナが生徒会長にキスをしたぞ!」


「なんて光栄なんだ!」



男子生徒たちは色めき立つ。




「ああああ、君、い、一体何を…!!?」



充は頬をガードするように手で押さえる。


「あら、幼い頃は頻繁にしていたではありませんか、充さん?」



「はあ!?」



ん…



よくよく女の顔を見れば…


遠い昔によく遊んでいた東京大区銀行取締役頭取の娘財前万里子だった。



「東京大区銀行取締役頭取の娘の財前万里子!?」


「そう、万里子ですわ!

やっと思い出してくださったのね、充さん!

あの約束…覚えていますよね?」


「約束?」


「充さんが幼い頃、言ったじゃありませんか…

万里子ちゃん、僕が万里子ちゃんに相応しい男になったら結婚しようって…」


「はあ?」


一切覚えていない。


「…私はそんな約束をした覚えはありませんね!

それに、財前さん、早く元の位置に戻りませんか?」


メガネを正す。



「充さん…分かりましたわ…

思い出すまで、この財前万里子が充さんのお側にいますわ!

よって、副会長として立候補いたします」


「ちょ、ちょっと、財前さん、待ちなさい!」


校長は万里子を止める。


「校長先生がなんですの?

東京大区銀行から出している寄付金を引き揚げますわよ?」


「う”…待ちなさい…

副会長はもう決まっている。

よって、財前さんには書紀をお願いしたい。

そちらのほうが宝来君と一緒に入れると思うがね?」


校長はウィンクをした。



「まあ、校長先生はナイスガイですわね!

決めました。

アタクシ、書紀になりますわ!」



勝手に書紀が決まった。

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