第60話

しかし、これでまた、北條流星と同列になった!



前代未聞の事態に、充と北條流星はお互い一歩も引かずに睨み合う。



「…私は生徒会長というのを勘違いしていたのかもしれない。

ただ、義務を全うするだけでなく、不登校者を学園に登校させる情熱!

そして、人の人格をも良い方に変えるカリスマ性…

うむ、素晴らしい!

こんなにも、宝来君の名を呼ぶ声がこの体育館に響いている…」



校長は感極まって泣きそうな声で喋る。



「まさか…校長!?」


キラキラ星の王子の表情が醜く一瞬で表情を変える。


「宝来充君に投票先を変える。

彼に一票だ!」



勢いよく言えば、盛り上がりは最高潮になった。




「今年の生徒会長は3-Aの宝来充君に決定だ!」



「「キャー!」ワー!!」



「そんな…馬鹿な…」



北條流星は拳を握る。


「クク…」



充から笑みがこぼれる。



やったぞ…



北條流星を叩きのめし、生徒会長の座に就いた!!!



勝利を手にした!




「さあ、宝来充君、生徒の皆の前で挨拶をしなさい」


校長はマイクから退いた。



充は眩しい笑顔でマイクを手にする。



「えー、今年の生徒会長を務めることになりました、宝来充です。

生徒会長になったからには、1人1人の人権を尊重し、自由に過ごせ、差別や虐めのない清き学園を創る!

悪いことをするやつはこの学園には必要ない…容赦なく追放する」



メガネをクイッと上げる。



「キャー、充様ー!!」


「宝来クーン!」





キマった…


充は勝利に酔いしれていた。



「オーホホホ!!!

さすが、アタクシのフィアンセですわぁ!!!」



どでかい甲高い声が体育館に響く。


ザワザワと当たりが騒然としだす。


「フィアンセ!?

何のことよ!?」


女子生徒たちの怒りの声が聞こえだす。





「な、なんだ!?」


充はびっくりして壇上の下に目をやる。



すると、マロン色の髪を手で掻き上げながら、壇上に近づく。



「あ、あれはー!」



男子生徒が声を上げる。

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