第59話

「まっ、待って下さい!!」



体育館に一段と高い声が響く。




声のした方角に生徒たちの視線が集中する。



ひっ…


人の視線が怖い!


でも!!




「ぼっ、僕は宝来充君に票を入れる!!」



男の声が響く!



ザワザワと周りが騒然とする。



「…なんだ、あいつは…」


いきなり登場した男に、北條流星の眉間に皺がよる。



「あいつは…!」


充は驚きに満ちて目を丸くした。




「僕は鷹宮慎也!

この学園に通ってる。

けど、前まで不登校だった!」


「だった?」



生徒達は首を傾げる。


「はぁ?」


北條流星は鷹宮を睨みつける。



「宝来君が来て、僕に話したんだ…

そんな狭い部屋に居ないで戦え…って!

宝来君は前に進む勇気をくれた!

居場所がないなら、宝来君が作ると励ましてくれた!」



みんな、呆気にとらえて、呆然と鷹宮を見ていた。


「だから、宝来充君、僕は今日から変わるよ!!」


「鷹宮君…」


「君の言葉で僕は前に進むことができた!

だから、生徒会長は君になって欲しいんだぁあ!!」



泣き叫びながら言い放つ。



「鷹宮君…かわったな」


充から笑みが溢れた。



シーンっと静寂が辺りを包む…


次の瞬間、充コールが湧き起こる。



「っ⁈」


突然のことに、充は驚愕する。


「いっ、一体何が起こってる⁈」


北條流星は苛立ったように壇上から生徒達を見た。



「ふふ…」


結夏はニヤリと笑う。



「せっ、静粛に!!」


校長の大きな声で再び静寂が訪れる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る