第53話

人気のない校舎の階段裏に来た。



「充様、そろそろ手を離して下さい」


「…ああ」


充はパッと手を離す。



「で、こんな所まで来て話とはなんですか?」



「さっきのあれは何だ?」


「あれ…?」


結夏は考える仕草をする。



「あれだ…

さっきの男とつ…つついたり、密着したり…腰に…」



充は言葉に詰まりながら言う。



「ああ!

あれですか?」


結夏は目をパチパチと瞬きさせた。


「そう、そのあれだ!

お前は俺とゲーム中の筈だ!

なのに、あの男とイチャつくのは…

ルール違反じゃないのか!!!?」



ビシッと結夏に対して指を指す。



「っ!」


結夏は目を丸くする。


「言い訳もでないのか!?」



「ー…ふふ」


結夏はクスクスと笑みをこぼす。



「何がおかしい!?」



「充様、あれはスキンシップですよ」


「はあ?

あれのどこがスキンシップなんだ?」


「海外生活が長いとスキンシップもあんなものになるんですよ?」


「だからって、あんなに触るのか?」



充は怪しむように結夏を睨む。



「彼も海外での生活が長かったみたいなので同じ同士として話が盛り上がってしまって…

つい…スキンシップが過剰になってしまったみたいですね」



「過激も何も…異常だ!

ここは神聖な学園だ。

場をわきまえていただかないと…」



やれやれといったように、わざとらしくメガネに触れる。



「それは…申し訳ございませんでした。

以後、気をつけます」



結夏は充に対して頭を下げる。



「ああ、分かってくれたのなら良いんだ」


「ええ。

ゲームは続行ということで…」


「勿論だ…

お前からあの動画を消して貰わないといけないからな…」


2人の間にピリピリとした緊張感が漂う。




キンコーンカンコーンー!



鐘が鳴る。



「授業が始まりますね」


結夏は職員室に戻ろうとする。



「おい!」



充は呼び止める。


「まだ、なにか?」


「あの男の名は何というんだ?」


「……秘密です」



結夏はウインクをすると、小走りで去って行った。








秘密だと…?




結夏は何を考えている?




あの男から敵意に満ちた視線を感じた…





考えが読めないまま、生徒会長選の最終日がくる。

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