第47話


無言の時間が続く



体は緊張するけど、俺の心は妙に落ち着いていた



この女は俺を苛つかせる



なのに、なぜ、嫌じゃないんだ?





「…ずっと…」


「はい?」


結夏は耳を近づける。



「ずっとここに居たのか?」


小鳥がささやくような声で充は言った。



その姿はいつもの迫力はなかった。


結夏はそれを可笑しくもレアに感じていた。



「…ええ。

私は充様の世話役ですから」



「…そうか。

お前がここに運んでくれたのか?」


「運んだのは執事です。

しかし、充様の様子を寝ずに一晩中監視していました」


「はあ?

監視…」



こわっ!


やはり、この女、油断してはいけない!



「冗談ですよ。

充様の熱がなかなか下がらなかったので、体を拭いたり、おでこのタオルを変えたりしていました」


「ー…あ、ありがとう」


充は少しうつむき加減でお礼を述べた。



それに、結夏はびっくりしたが、直ぐに笑顔を見せる。



「はい、どういたしまして」



「お前は…」



充は結夏の顔を見つめてなにか言いたげにしていたが、体温計の音に邪魔をされた。



「はい、熱は…

下がっていますね」


「迷惑をかけた。

ずっと俺の看病をして休んでないのだろう?

少し寝ると良い…」


「え!!?

充様の直々のお誘い、なんて大胆なんでしょう!?」


「はあ?」


「今のお言葉を訳すと、

俺のベッドで一緒に寝よう

という意味でしょう?」


「なっ、何を言ってるんだ!?

ゲストルームで!、に決まっているだろう!」


怒鳴り声を上げる。



「…それだけ元気になったのなら安心いたしました。

昨夜はうなされていたので心配でしたよ?」


「…。」


やはり、聞かれていた。



俺の秘密…

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