第43話

キイッ…


ゆっくりと玄関のドアが開いた



「…君たち…しつこいね」



鷹宮が再び姿を表す。


その手にはエアガンを持っていた。



「もうすぐママが帰ってくるんだ!

君達がいると邪魔なんだよ!」



充はエアガンを一瞥する。



「…威嚇しているつもりか?」



「帰らないなら撃つぞ!」



フーフーと興奮気味に言う。



「…ならば撃ったらどうだ?」


充は冷めた目で言い放った。



「ほんとうに撃つぞ!?」


「充様!?」



(充様、相手を挑発してどうするんですか!?)



「そんな玩具、本当の銃に比べたら全く怖くない」



「威力が最強のエアガンだぞ!?」



威勢がよく叫ぶ。



「…ならば、なぜその自慢のエアガンを虐めた奴に対して向けなかったんだ?」



「っつ!!!?」



「そんなに威勢がよく言えるなら、その銃口を向けられた筈だ」


「あ、あ…そんな…あいつに!?

むむむ無理だ!」


「北條流星には無理で、私には出来るのか?」


「なぜ、その名を知ってるの!!!?」


鷹宮は顔が真っ青になる。



「生徒会長の座を争っている」



「生徒会長!?」


「私は生徒会長になるために、生徒の票を集めている。

だから、鷹宮君の票が必要なんだ」



「あ、あ、ああいつがなんで学園に居るの!?」


「最近、転校してきた」


「何だって…もう、終わりだ…

学園にはもう行けない…」



膝から崩れ落ちた。



ガシャン…


エアガンが悲しく地面に横たわる。



「…フン!」


グシャッ!!!


充は容赦なくエアガンを踏みつけた!



「ヒィ!」


いきなりの行動に鷹宮はビクッと身を強ばらせる。



「鷹宮君、君はこんなくだらない物に頼って身を守っているつもりか?」


「わ、悪いか!?」


「なぜ、戦わない?」


「たたかう…?」


「そうだ。

戦わずに、人を避け、一生狭い世界で暮らすつもりか?」



「い、虐めに合ったことがない、お、お前に何がわかる!?」



「分かりたくもない。

私はそんな事には屈しない!」


「それは君が強いから言えるんだろ!

僕は強くない…弱いんだ…」



「…きっと、北條流星は鷹宮慎也という存在は気にもとめていないだろうな…

虐めた奴を見返すこともなく、鷹宮慎也はそうやって腐っていくのか?」



「……なんだって…」


「君はこのままずっと部屋で過ごして何も成長しないまま、時だけが過ぎ、

ただ、愚かに老けていくことを選ぶんだろう?」


「…ほ…ほっといてくれ!

落ちこぼれの僕に愛想をつかしてみんな僕から離れていく!

だから、忘れたいんだ、僕から離れた人も北條流星も何もかも忘れたいんだよ!」


「…離れた奴らのことなんてどうでもいいじゃないか。

君の人生からはもう消えた人たちだろう?

それに、北條流星は学園に居る…復讐したくはないのか?」


「え…?」



「私は君の力になりたい。

1人になるのが怖いのなら、私が君の居場所を作る」



「居場所…?」


「鷹宮君は中学校は有名な進学校で学年一位を取っていたらしいね。」


「ー…過去のことだけど…」


「本当はとても頭がいいんじゃないか?」


「………北條流星には負けたけどね…

何をしてもやつには勝てなかった…」


「いや、十分だよ。

私が生徒会長になったら、鷹宮君には会計係をお願いしたい」


「は?

会計係…」


「ぴったりだろう?」


「はは…ふざけてんの?

なんで、僕が学園に行って生徒会に入らないといけないんだよ?」


「いい案だと思うけどな…

学園の生徒会は絶大な権力を持っている。

下手をしたら、校長より力があるかもしれない。

北條流星を潰す力を手に入れられるかもしれないぞ?」



「ぼ、ぼくは…」



鷹宮は唇をかみしめる。

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