第42話

2人でじーっと玄関前に立つ。


もう、何時間無言の時が経ったのだろう…



陽が段々と沈んでいくのを充は黙って見ていた。





「充様…寒くないですか?」


結夏は充の身体が震えているのに気付いた。



「これくらい、大丈夫だ!」




カタカタ…


気丈に振る舞うが、体は微かに震えていた。



「…充様、もう、帰りましょう…」



「帰らない…

鷹宮の票が必要なんだ…

それに、あいつは金で動くやつじゃない

…情に訴えるしかないんだ」



「充様、そこまで見抜いていたのですが…」



「はぁ…当たり前だ…

使えるか使えないかは見抜く力はあるつもりだ」



「ということは、使えると判断なさったんですね…」



「ぁあ、鷹宮は優秀そうだ…」



「なるほど…」





シーン…



再び無言の時間が流れるー



辺りは真っ暗になる







「夜になりましたね」


「結夏、もう帰っていいぞ。

バイトの時間はとっくに終わっているだろう?」



「いえ、私も居ます」



「夜は冷える…」



「気にしません。

それに、残業代として、後できっちりと請求させていただきますので、ご安心下さい」


「………

…すまない…」


頑固な結夏に充は呆れながらも、申し訳ない気持ちで結夏を見た。


「良いんですよ、充様」



それに、今の充様をほっとけませんから…

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