第41話

……


…この宝来充を無視しただと!?



いい度胸だな…




ピンポーン!



怯むことなくチャイムを鳴らす。



「…なに?」



「こんにちは!私は君と同じ学園に通う、宝来充「帰れっ!!」」



怒鳴られたが、そんな事は気にしていない様子だ。




「…帰ることはできない。

何故ならば、君と話をしなければならないからだ」



「ー……」



シーンと静まり返る。



「声がしなくなりましたね…

充様、今日はもうやめた方がよろしいのではないでしょうか…?」



「ここまで来てそれは出来ない」



「そうですか」


ピンポーン


充は躊躇わずに鳴らす。



っと!



ガチャリと玄関ドアが開く…



「やっと話を聞いてくれr『バシャッ!』」



「キャっ!?」


結夏は小さく悲鳴をあげる。


「……。」


充の全身がびしょ濡れになった。



そして、鷹宮慎也はバケツを投げ捨てた。


「いいか、帰らないと、次はもっと酷い目に合わせるからな!!」


ふしゃーっと威嚇する。



「…やっと鷹宮君の顔が見れたよ。

こんにちは」


充は笑顔で鷹宮に近づく。



「ぁっ⁈」



びしょ濡れなのに動じることなく笑顔の充を見て、鷹宮は絶句する。


「どうだろう、少し時間をいただけないかな?」




どんどん鷹宮に近づく…




「ぁあ…あっ、うわぁあー!近づくな!帰れぇ!」


叫びながら、鷹宮は家の中に避難した。


「…充様、濡れたままでは風邪をひいてしまいます…今、迎えの車を手配するので帰りましょう」


結夏は諭すが、充は拒絶の意思を込めて首を振る。


「しかし…」


「票を入れて貰うまでは帰らない!

何としても、あいつの票を手に入れてやる…」


「充様…」



最初はあんなに面倒臭がっていたのに…


確実に充様は変わっている…



結夏はニコリと笑う。

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