第40話

「…愛羅さん、後ろに乗せていただくよ」


「はーい、どうぞぉ♡」


充はバイクに乗った。


「さ、愛羅の腰に手を回して、ぎゅぎゅっと、しっかり掴まっててね♡」


「ああ。

こうか?」


「うまーい、さすが充くーん!

じゃ、いっくよー!」


ブォォン!


バイクは派手な音を立て、走り出した。


「お”い、ねーちゃん、乗りな」


YAMAHAのバイクで現れた愛苦は後ろの座席をトントンと叩いた。



「失礼いたします」


結夏は鮮やかにバイクに乗り込んだ。



「ヒュー、ねーちゃん、バイクに乗り慣れてるな」


「ええ…まあ、アメリカで乗り回していましたから」


「へぇ…そりゃ、イカすな」


愛苦はニヤリと笑うと、バイクを走らせた。













ーーー


最後の家についた。


「三日後の投票日に会えるのを楽しみにしているよ」


「うん、愛羅は絶対に充くんに入れるー」

「わーてるよ。

そんかわり、絶対に生徒会長になれよぉ!」


「ああ、君たちの個性が尊重される学園を創らなければならないからな」


その言葉を聞いて、愛苦はニヤリと笑った。



こいつだったら、この生きづらい学園を変えてくれるかもしれないなぁ…





そんな期待を込めながら去っていった。



「はあ…バイクなんて生まれて初めて乗ったが…

生きた心地がしなかった」


もう二度と乗らないと心に誓ったほど、愛羅の運転は荒かったらしい。



「充様、ここが最後の家です」


「ふーん…随分と立派な屋敷だな」


「ええ…ここの家はあの美容整形業界で有名な医者の御子息がいますが不登校となっています。

名前は鷹宮慎也。

しかし、中学校までは有名な進学校で学年一位を取っていたとの情報があります」


「そんなやつがなぜ、不登校なんだ?」


「原因は過去に虐めを受けた時のトラウマで精神を病み、以来、引きこもりとなっているそうです」


「ふーん、虐めか…」


「虐めの主犯は北條流星だった…との噂です」


「なにっ!!?」


充の目は見開かれる。


「フフ…そいつから北條流星の情報を得る絶好のチャンスだな」


不敵に笑みを浮かべる。


「充様、また悪い顔になっていますよ…」


少しは隠したらどうなんだと結夏は思っていた。




「さ、いくぞ、結夏!」


「はい、充様」



ご機嫌で門を勝手に開き、玄関のチャイムを鳴らした。




「……誰?」


小さな声がインターホンから聞こえてきた。



「こんにちは、突然訪ねてKー【ブツッ!!】」



通話が強制終了された。

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