第39話

「でも…充くんのメガネが…割れて…」


「気にしなくていいんだよ。

屋敷に帰ればストックは沢山あるからね」



そう言って、メガネに触れる。



「しかし、見えづらいのを我慢しなければならないのは苦だが…

時間は有限だ。

仕方ないがこのまま次に行くとするか…」


「あ”あ”、これからどっかに行くのかぁ?」


「ああ、次に回る予定の家に行くんだ。」


「ブッッハ!!

坊っちゃんなのにアシがないのかよ!?」


「仕方ないだろう、この世話役の女がそうしろと言ったのだからな…」



そう、充達は徒歩で各家を回っていたのだ。


これも、結夏の戦略だ。



生徒会長たるもの、人々の心を理解せよ!


学園の生徒はみんなバスや電車で通学し、送り迎えなどしてもらってはいない。



送り迎えをしてもらっている充が特殊すぎたのだ。


歩いて苦労を知り、人々と同じ目線に立ち、寄り添えと…これも修行だと言われた。



「えー、オバサン超スパルター」


「おばさん……?」


結夏の表情が一瞬曇る。



「ねえ、愛苦…」


愛羅は愛苦を見つめた。



「あ”ー、そうだな…

メガネを壊してしまった詫びとして、その家まで送らせろぉ!」


「……いいのかな?」


「気にしないでよ!

バイク取ってくるから待ってて~」


愛羅はとびっきりの笑顔を見せた。



しばらくしてー…




「さ、乗って♡」


いかついHONDAのバイクに乗って愛羅は現れた。



「では、私がー…」


結夏が乗ろうとすると、メットで塞がれた。


「あのさぁ、オバさんに言ったわけじゃないからー!」


怒った表情で愛羅は文句を言った。



イラぁ…



結夏の顔が珍しく怒っている。

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