第44話

「…投票は3日後。

鷹宮君が学園に来てくれることを信じている」



「…………」


鷹宮は無言で俯いた。




「話は以上だ。

時間を取らせて申し訳なかったね。

じゃあ、また会おう」



充は笑顔で手を振った。




鷹宮の表情は困惑に揺れていた。




















「充様…彼は来るでしょうか?」


道を歩きながら結夏は言った。



「…分からないな。

俺の思いは言ったが果たして、鷹宮の心に響いたのか…」


「彼の傷は深そうですね。」


「ああ、深いと思う…

周りから人がいなくなる恐怖は計り知れないからな…」



充は憂いを帯びた表情で空を見つめた。



「充様……?」


「ん?」


「充様も過去にそういうことがあったのですか…?」


「…はあ!?

そ、そんなわけ無いだろ…」


ふら…



突然、充の体が前のめりに倒れる。



「充様!?」


結夏は慌てて充の体を抱き支える。



「………っ…」


「熱い…充様、大丈夫ですか!?」


「ぁぁ…すまな…」


充の呼吸は浅く、小さい呼吸を繰り返す。



「まさか…!?」


おでこに手を当てれば、異常な熱さだった。



「熱がある!

充様、しっかりして下さい!」


「…ぅ…」



「今、迎えの車を手配いたしますね!」


「ゆ…ぅか…すまな…」


「こんな時に謝らないで下さい!

もう、喋らないで…」



「……ぁぁ」



結夏は充を壁に寄り掛からせた。



そして、充の手をぎゅっと握る。



「充様…今日は頑張りましたね。

少し見直しました…」



「…ん…」



その手は小さいけど、なぜか精神を落ち着かせた…

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