二 段

第36話

日曜日ー…



「俺のために票を入れてはもらえないだろうか…?」


優しく微笑み、大切なモノを扱うような手付きで手を握る。



「ひゃあっ!!?

ほ、ホンモノの宝来くん!!?」


「ああ、そうだよ。

君の清き一票が私には必要なんだ」


訴えるように真剣に見つめる。



「あーんー!!

宝来くんが私にお願いしてるの!?夢!!?」


「いや、現実だよ」


ニコリと笑う。


「AAAA-!!

私、学園がつまんないし嫌いだった…でも、宝来くんが生徒会長として活躍するなら…

もう一度通う…私、通うわ!!」


「ああ、来てくれ。

そして、私の活躍を見てほしい」


「はい!!キャー!!どうしよう、手が洗えないー!

手を撮ってインスタにあげないとー!!」


女はバタバタと家の中に入っていった。



「ふぅ…あと何人だ?」


「そうですね…残り3人です」


太陽がジリジリと充を照らす。



「…暑いな。

早く終わらす…行くぞ」


「はい」


充は歩きだした。



その後ろを結夏は着いていく。



「でも、充様、思ったより順調のようですね。

充様は性格が悪いので、もっと手こずるんじゃないかと思っていました」


充は立ち止まる。


「はあ?どの口が言うんだ?

俺は聖人君子と呼ばれているんだぞ。

その俺のどこが悪いんだ!?」


「そう、それです!その言葉の選択が性格の悪さが滲み出ていますよ」




くううぅー!


この女ー!


言わせておけば、俺を苛つかせるのは天下一品だな。



ギリギリと歯を食いしばる。




今に見てろ…


俺の魅力で骨抜きにしてやる!!



フフフ…ハハハハー!!



「着きました」


「あ!っとここか…」



とある黒光りした一軒家に着いた。



「充様、ここの家は兄妹で不登校です。

素行も悪く、危険なのできをつけt『ピンポーン!』」


結夏の話を遮り、チャイムを鳴らした。



「充様!?

私の話を聞いていましたか!!?」


結夏は慌てふためく。



「はあ…お前の話は長いんだよ」


面倒くさそうに結夏を見る。



「…ー申し訳ございません」



少しシュンとした結夏を充は知らなかった。



「あ”ーい?」


玄関から、金髪の剃り込みが入った、強面顔の男が出てきた。


顔面にはピアスがこれでもかと付いていた。



「初めまして、斑目愛苦君。

こんな日曜日の昼下がりに突然訪ねて申し訳ない」


「あ”んだテメェ!!?」



早速メンチをきられる。


「私は、3-Aの宝来充。少し話があるんだ」


充は斑目愛苦のメンチに一切怯むことなく話す。



「あ”あ”?あー、宝来充…金持ちの跡取り息子のボンボンかあ?」



「そう、その宝来充です。

今日は愛羅さんもいるかな?」


「あ”あ”、居るけどよぉ、何のようだぁ?」


あ”あ”ん”?っと喧嘩腰に顔を充に近づける。


しかし、充の表情は一ミリも動かずにいた。



「呼んでくれないかな?」


ニコリと聖人君子の顔で微笑む。



「ーっち”、良いけどよぉ…たくっ、くえねーなー…」



ブツブツ言いながら、中に戻っていった。



「充様!」


心配そうに結夏は充を見つめる。



「結夏!

いいか、そこでじっとしていろ…」


充は命令するように結夏に言い放つ。


「みつる…さま…」



結夏の瞳が見開かれ、思わず釘付けになる。



その姿は堂々としており、威厳に満ちていた。



「はい、かしこまりました」



結夏は従う。



「金持ちのぉ、ボンボンが、愛羅に用があるってぇ?」


金髪の巻髪を派手なネイルをしている手で弄ぶ。


「らしいぜぇ、愛羅!」


「ふーん…聞こうじゃん!」



派手なギャルメイクをした顔が笑う。

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