第30話

「お前がなんでここにいるんだ!?」



ドアの方を見ると、余裕そうな佇まいで壁に寄りかかっている結夏がいた。



「充様、言ったはずですよ。

油断してはならないと」



結夏は美しい目を細めた。



「ふんっ、油断などしていない!」


「いいえ、充様は隙を見せ、敵に甘い汁を吸わせてしまいました。

それがこのザマです」



結夏は坦々と事実をのべる。



「隙など………

確かに、この学園で北條流星という名を把握できていなかった…」



「そう、なぜならば、北條流星は一週間前に転校してきた。

そして、何らかの目的で秘密裏に生徒会長に立候補し、充様に存在がバレないように影で暗躍して色々な人を買収し、票数を獲得した…

っと、筋書きはこんなものでしょうか?」



「…お前…」


結夏の考察に充はあっけにとられる。



「充様、敵はあの北條グループの跡取り息子と呼ばれる北條流星です。

彼は充様と同じく悪どく狡猾ですね。」


「北條グループと言ったら、日本で有名な大会社だね。

そんな子が転校してきたのか…

宝来君、私の力不足でした…」



中木は床に頭を擦り付けた。


「役立たずが……」


「その通り…

罰は受けるよ…」


泣きそうになりながら、充を見上げる。



そんな中木を冷ややかな目で見下ろす。



「はあ…おい、お前っ!」


充は結夏を睨む。


「お前ではありません。

結夏!」



結夏は凛と言い放つ。



「っく…」



なぜ、俺がこんな女の名を呼ばねばならないのだ!?


虫酸が走る!












「ゆ………か……」



「はい?」



結夏はわざとらしく声を上げる。



「あー、クソっ!

ゆ………結夏、北條流星の情報を教えろ!」



「かしこまりました」


結夏の満足そうに笑った。

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