第44話

ななみはケントの卓の様子を見る。


「今日はケントに悩み聞いてもらって、楽になった!

また、明日からお仕事頑張れそう!」


「そう?有美が満足したならいいんだよ。」


ケントは微笑む。


「ねぇ、ケント、今日は有美の為にもっと笑って?

ケントが笑顔だと、有美も幸せなの。」


「有美が望むなら、俺はいつでも笑顔になるよ。」


きゃーっと女の叫び声が響く。

と同時に、シャンパン入りまーす!っと元気な声がホールに聞こえた。



「えっ…何あれ?」


ななみは訝しげに見る。


「ケントは何故人気か…

気が利いて優しくて、女性の話にはとことん付き合い、否定せずに、甘やかしてくれる。

が、最大の理由はケントの笑顔にある。

零距離で微笑みを見たものは心臓を撃ち抜かれ、途端にケントにハマる。

まさに、零距離スマイルケントの異名を持っているんです。」


「あっ、もしかして、カルマさんの実況中継ですか!?」


「それ以外に何があるんですか?」


はあっとカルマはため息をつく。


「有難うございます!

へぇ、ケントの笑顔か…。」


私の相談に乗ってくれている時は無言で頷くような感じだったけどな…

少し、寂しいな。


ケントのあまりの変貌にななみは切なさを覚える。


「ななみさん…まだ、終わりではないですよ?」


カルマは忠告する。


「はい、分かりました。」


「ケント、もっとこっちに来て!

シャンパン一緒に飲も?」


グラスを持ちながら、有美は自分の太もも付近をトントンと手で叩く。


「分かりました。

失礼します。」


ケントは先程より、有美とグッと距離を縮めた。


「もっと!」


グッと有美は体を近づける。


「参ったな~。」


ケントは困ったように笑うが、姫の要望に答える。


「あの女…ケントに近づきすぎじゃないですか!?」


ななみは怒りをあわらにする。


「まあ、ああいう人は多いですよ。」


カルマは冷静に言う。

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