第43話

「あー、ケントと美味しかったねー!」


「うん、そうだね。」


会話をしながら、ケントと姫が店に入ってきた。


「ケント、今日は有美の相談聞いてね!」


姫はケントの腕に自分の腕を絡め、密着して歩く。

ケントもそれに応えるように、姫はをエスコートしながら、歩く。

そして、ななみの卓に近づく。


ななみはケントの姿を捉える。



「ケントだ!どうしよう…!」



ドキッとななみの心臓跳ね上がる。


すると、カルマは機転を効かせ、長身なことを生かし、ななみが見えないように覆いかぶさる。


「カルマさ…」


「しっ…私に合わせて…。」


冷静にカルマに言われ、ななみは動きを止める。

周りから見たら、いちゃついている様に見えた。


ケントはカルマの卓をチラッと見るが、それだけで、特に突っ込まずに通り過ぎた。


「もう大丈夫ですよ。」


「カルマさん…」


「はい、なんでしょう?」


「グッジョブです!」


「はっ?」


キラキラと尊敬の眼差しでカルマを見つめた。


「カルマさんの咄嗟の行動、まさに、できる男です!あー、カルマさんに相談して良かったです!」


ななみはカルマの手を握り、ニッコリと笑う。


「えっ…ぇえ、まぁ、ホストですから。」


ななみのベタ褒めに、柄にもなく反応してしまう。


「さっ、観察観察!」


カルマの気も知らず、ななみはケントの卓の様子を伺う。


この女は無意識でやってるのか…?


ななみは意外と自由奔放だった。



「カルマさんも、一緒に観察お願いします!」


ウルウルと目を潤ませる、カルマの手を握る。


いちいち、なぜ、手を握るんだ!

普通は逆だ。


「わっ、分かりました。

見ればいいんですか?」


「状況をホスト視点で解説してください。」


「え⁉︎野球の実況中継じゃないんですから…ちょっと、、」


ななみは目を見開き、カルマの瞳を覗き込む。

その瞳はカルマに有無を言わせない、怖い…目だった


恋する女は怖い…カルマは改めて学んだ。


「分かりました。

特別ですよ?

まったく、割に合わない。」


ケントの弱みを握る筈が、ななみの熱意に目的を忘れてしまいそうになる。

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