第40話

「すみません。なんか、恥ずかしい発言でしたね。」


「まぁ、そう、落ち込まずに…。」


励ますつもりが、カルマの心は裏腹に、今の状況が面白くて仕方がない。


ななみの遊び慣れていない初々しい反応に思わず笑いが出そうになる。

カルマから見て、ななみはチョロすぎる女だった。

どう転がす?そんな悪い考えが頭をよぎる。


「カルマさん、こんなこと言うのも気が引けますが…ケントの普段の仕事をケントにバレずに見たいんです。」


「えっ?ケントにバレずに…?」


「はい。

実際にケントの仕事ぶりを見て、キスマークの意味を知りたいんです。」


「ようは、ケントが誰にでもそういう軽はずみな行為をするのか知りたい?そういう事ですか?」


「…はい。」


ななみはチラッとカルマの様子を伺う。


「ケントに直接電話でもして聞けばいいじゃないですか。」


「それが、連絡先を知らないんです。

教えてくれないし。」


「えっ!?ケントとは知り合いなんですよね?」


「実は、ケントとは幼少期から隣の家同士で、幼馴染みなんです…。」


「えっ!?そうだったんですか…

それはまた…なんというか…どういうつもりでキスをしたのか…不安になりますね。」



ななみの思わぬカミングアウトに、カルマは狼狽える。


「ケントは数年前、姿を消し、先日、突然私の前に現れたんです。番号も拒否されてたのに…。

なのに…キスなんてして、ケントの考えていることが全く分からないんです。」


ななみは不安げに、ウルウルとカルマを見る。



あー、女の涙には弱いなぁ…


カルマはななみの表情を見ると、言うことを受け入れそうに…


そして、はぁっと、ため息をつく。

コーヒーを一口飲むと…



「ななみさん、ケントとは付き合っていないんですよね?」


「はい!」


「ケントの姫様(お客)でもないと?」


「ちがいます!」


「ということは、爆弾にはならない…か…。」


カルマは考えたのち…


「いいでしょう、力になります。」


ニッコリと笑う。


「有難うございます!」


「特別に、初回飲み扱いでいきましょう。」


「分かりました。」


「私の売上にもなりませんが、協力するからには、見返りは勿論、ありますよね?」



カルマはタバコをくしゃっと灰皿に押しつけた。


「みっ…見返り?」


「はい。」


「あなたはお金がある方ではない…そんなあなたが提供できるものって、一体なんですか?」


カルマは試すように言う。


「提供できるもの…」


どうせ、体とか言うんだろうな…

おおよそ、想像出来る答えに、カルマはクスッと笑う。



「そうですね…あっ、実は、趣味でアクセサリーを作っているんですが、良ければ、カルマさんにプレゼントさせて頂きます!」


「は?アクセサリー?」


カルマは唖然とななみを見る。


この、カルマに手作りのアクセサリー⁉︎


「いらないです。」


「えっ!?」


ななみはショックに顔を歪ませる。


「はぁ、話になりませんが…そうだ、1日、デートをしましょう。

より、ホストを知れる、チャンスですよ?

悪い話じゃない。」


「…分かりました。

それで、お願いします。」


「でわ、いつ、バリアスに来ますか?」


「金曜日に!」


「分かりました。」


こうして、ななみはバリアスに金曜日、初回扱いの客として、行く事になった。

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