第16話

「けっ…」


声を発すると同時に、グイッと健太に引き寄せられ、顔がお互いに向かいあってしまった。


「ななみちゃんの謝罪はまだ、受け入れたわけじゃないよ?

昨日の発言には傷付いたし、No.1としてのプライドが許さないんだよね。」


「うっ…どうしたら、許してくれるの?」


「俺と恋しよ?」


「なにいって…」


健太はななみの顎に触れると…


距離を縮めてくる。


健太の顔がなぜか近づいてくる。


えっ?

なんで、健太の顔が…


「…た…んっ…!」 


唇にそっと何かが触れる。


ななみは目を開けたまま、健太を見る。



健太にキスされてる⁉︎


なっ…!



ゆっくりと健太は離れる。


その様子をななみは呆然と見ていた。


「ななみちゃんが俺に惚れてくれたら、許してあげる。

ただし、ここはホストクラブだから、本気になったらいけないよ?

だって、疑似恋愛をする場所だからね。」


健太は悪びれる様子もなく、ホストクラブの裏側をスラスラと言う。



「はぁあ⁉︎」


「あと、ここではケントって呼んでね、ななみちゃん♪」



「…帰る!!」



フンッとななみは健太から視線を逸らし、健太に背を向ける。


「ななみちゃんの寂しさを埋めてあげるから、いつでもおいで。

俺はいつもここに居るからね。」


「2度と来ないわよ!」


ズカズカと地響きが鳴りそうな音で歩く。




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