第15話

「あっ、あのね、健太、昨日は家まで送ってくれてありがとう!」


「気にしないで。それより、二日酔いはしてない?大丈夫?」


「大丈夫だよ。

元気だから!」


「そう、それなら良かった。

ななみちゃん、酔ってさ、部屋に運ぶの大変だったよ。」


無駄に爽やかな笑顔で、胸を抉るような言葉が告げられた。


「えっ…うそ…。」


健太の発言に顔が青ざめる。


「最終的に、オレがお姫様抱っこして部屋まで運んだっけ…。」


「アー…もぅ、本当にごめんなさい!」


「いいんだよ。

久しぶりに再会したんだ。

つい、羽目を外したんだよね?」


「そっ、そんなとこかな!」


健太のフォローに助けられる。


やっぱり、優しい…


こういう、さりげない気遣いが大好きだ。



「健太、あの…ね。」


ななみは上目遣いで健太を見る。


「どうしたの?」


健太は笑顔で応える。


「ずっと、健太に謝りたかった…

昔、健太に言ったあの言葉のこと!」


「…ぁあ。」


健太はななみの様子を伺いながら、足を組み替える


「健太、怒ってるよね…私、ずっと後悔してた。

健太を傷付けたこと。人の外見なんて、私がとやかく言える立場じゃないのに、健太のこと否定した。

本当にごめんなさい!」


「ななみちゃん…。」


「あと、昨日の居酒屋での事もごめんなさい!

それが言いたかったんだ。

じゃあ、そう言う事だから、もう、行くね。」


ななみは帰ろうと、立ち上がる。


「待って!」


腕を掴まれる。


「⁉︎」


引き止められたので、ななみは吃驚して、静止する。


「ななみちゃん、昨日、俺が言ったことを覚えてる?」


「ー…あー、えっと…なっ、何だったかな?

ごめん、覚えてないみたい!」


無理やり作った愛想笑いで誤魔化す。


「…ふーん…。」


健太は笑顔のまま、ななみを見る。

なにやら、全て見透かされているような気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る